癒し家 縁の想い
癒し家 縁の想い
「いいところ知ってるから行ってみたら?」
友人にそう言われた場所へ、電車に乗って向かっている。
普段から仕事で長時間電車に乗っているせいか、身体に伝わるこの揺れが正直好きではなかった。
私は仕事に追われていた――。
日々、売上の数字に追われ、目標に向かってひた走る営業という仕事が、私の心と身体に重くのしかかっていた。
引き戸を開けると、
はっきりとは言えないけれど、
私の暮らしを取り巻く
あれやこれやとは別の
ゆっくりとした時間が流れている。
駅から十分くらい歩いたら、
一軒の古民家が見えてきた。
「こんにちはー」
と発した自分の声が、いつもより少し明るかった気がした。
疲れというのは、色んなかたちで現れてくる。
私の場合、普段の緊張で身体が凝り固まっていたらしく、
ほぐしてもらっている間は痛みしか感じられなかった。
ただ、その間のおしゃべりは心にすっと入ってきて、
いくぶんか気持ちが気がする。
私の身体と心は、もう一度「リラックス」を思い出せるんかな?
その答えもまた、ゆっくりとやってくるんやろう。
身体も心もちょうどよく満たされている時、人は
私だけじゃなくみんなが笑顔になるにはどうすればいいんやろう?
その答えは、「たまたま」の人の縁 -en- にあるのかもしれない。
あれから数日、
相変わらず忙しい毎日を
過ごしているけど、
少しだけ変わったこともある。
元々よく笑うほうだった私が、いつの間にか忘れていたそのしぐさを思い出せたのだ。
ほぐしてもらって肩の荷が下りたのか、おしゃべりで気持ちにゆとりが出たのか、
私の身体と心はふたたび始めた。
そう思えた縁でのひとときが、
私に合った
リラクゼーションだった。
ほぐしてもらったあの日、
行きしなの電車の揺れに
気持ちが沈んでいた私は、
帰りしなの揺れに
不思議な心地よさを感じていた。
窓には夕日が反射して、
眩しくもずっと見とれてしまう。